プロパティマネジメントの目的
経営代行型(プロパティマネジメント)管理会社の行う業務はオーナーさまの代理業務であり、委託者であるオーナーさまが所有する物件からの最大収益(キャッシュフロー)を確保し、その不動産価値を最大化することが目的です。この目的を達成するために、プロパティマネジメントの管理会社は業態の中から徹底して利益相反となる行為(その疑いのある行為も含む)を排除しています。同時に、運用に透明性を持たせ、しっかりとした説明責任を持って業務にあたります。
また、従業員はこれらの内容を完全に理解し、業務に反映させることのできる実行力と能力、知識を持ち合わせていなければなりません。利益を最大化し、物件の稼働率を上げるための様々な手法を修得していますし、それを高いレベルで安定させる能力も重要です。例えば、月額賃料は常に近隣の相場より高い位置に設定できるように市場を調査・分析し、運用する物件をマネジメントしていきます。さらにリスクマネジメントも重要な業務で、物件の地域性や構造・設備、防犯上の問題、環境問題が発生する可能性、時間経過による危険度など、あらゆるリスクを将来に渡ってなくしていくように管理しなければいけません。
金融資産としての運用能力
プロパティマネジメントによる不動産経営では、物件を金融資産としての観点から金融工学的に評価し、投資指数についても比較検証することができます。これらを基に、オーナーさまの意向を反映させながら運用計画書、マネープランを作成します。それに従って運用を実行していくことで、運用前、運用途中、将来にわたって不動産としての価値を最大化していくことができるのです。経営代行型の管理会社は、常に物件を金融資産として分析して問題点を発見、報告し、的確な解決策を提案します。そしてそれを反映させたマネジメントを行い、改善していくことで常に資産としての価値の最大化を図っていきます。
従来の賃貸管理では、このような業務がまったくと言っていいほど行われてきませんでした。先述の通り、日本ではこれらが求められる環境になかったので、これらの業務ができなくても何ら不思議ではないのですが、むしろ知らないことをオープンに自ら積極的に学び取り組む努力こそ、賃貸管理業界には求められているのです。プロパティマネジメントは手法を学べば学ぶほど、従来の賃貸管理との違いが判ります。それはきわめて合理的な不動産業界のグローバルスタンダードであり、携わる当社も自信と誇りを持って遂行できる、プロフェッショナルの手法であると言えます。
プロパティマネジメントと日本の賃貸管理
プロパティマネジメントは従来の賃貸管理とどう違うのでしょうか。管理という点では、基本的に行っている業務は表面上ほぼ変わりません。日本における賃貸業は基本的に「仲介業」から発展してきました。部屋を探す人に希望条件の物件を紹介し、仲介手数料をいただくという仕事です。
現在でも、「賃貸管理」業務をしていても主な収益が「仲介手数料」である会社は多くあります。仲介料はあくまで入居者からもらう収益であり、一方で「管理料」はオーナーさまからいただくものです。「管理会社」でありオーナーさまから管理料をもらっている限りは、オーナーさまの利益に貢献しなければなりません。「仲介」と「管理」はその立場が違うのです。
例えば「解約」の際、仲介の立場であれば入居者の解約は潜在的には歓迎すべきことになります。再度仲介手数料を稼ぐことができるのですから、積極的に解約を抑止しようという意識は起こらないものです。解約の抑止について、英語では「テナント・リテンション(Tenant Retention)」といい、プロパティマネジメントが確立しているアメリカにおいては、日本と違って大変重要視されています。解約が多ければ多いほど空室期間が発生し、さらに原状回復に掛かる費用もかさむので、損失は大きくなります。解約を少なくすることはオーナーさまの利益増に直結しますので、アメリカのプロパティマネジメントでは、常に「どうすれば入居者にもっと長く住んでもらえるか」を考えます。 この点が、仲介業から発展した日本の賃貸管理とアメリカの「プロパティマネジメント」の大きな違いです。不動産先進国のアメリカでは、そもそも居住系においては、「仲介手数料」を入居者からもらう習慣はありません。
「管理」の本当の意味とは
現在の「賃貸管理会社」の一般的な業務内容を確認してみます。まず、入居者を募集して、契約して、家賃を集金して、オーナーに送金して、クレームを対処して、物件の掃除・点検をして、退去立ち会いをする。それが、「管理会社」と、そう思っている方も多いことでしょう。それが「管理」ではないのか、と。
これでは、単に言われたことをやっているだけと言われてしまうかもしれません。しかし、「プロパティマネジメント」は違います。オーナーさまから管理料をいただいている以上、「オーナーさまの利益を最大化する」ための業務が必要です。
少しでも高い家賃で決め、空室・解約を減らし、日常的な運営コストを減らすことを常に意識して、管理・運営していかなければなりません。仲介の立場であれば、築年数が古く長期間空室が埋まらなければ家賃を下げる提案をするでしょう。この対策は即効性はありますが、結局はオーナーさまの手取り収入を下げるだけです。
早く決まり仲介手数料は稼げましたが、オーナーさまの利益より管理会社の売上を優先していることにならないでしょうか?「物件が古くなってきているのだから仕方がない」と思った方は、単なる「仲介」の方です。「マネジメント」の発想の方は、「物件力」そのものにおいて、いかに他の物件との競争力において見劣りしないものにするか、募集の戦略においても常に新しい方法を模索し、運営上の差別化についても追求します。空室問題を解決するには様々な手法があるのです。
「物件力」をつけるためには、再投資も考えなければなりません。再投資額に見合う家賃を回収できれば、最終的な手取り賃料が下がることがないわけです。そのためには、ローンを組む場合もあるためファイナンスの知識も必要です。その再投資が、収益とローンの返済との関係において、どういう意味を持っているか、すなわち「投資分析」もできなければなりません。
集客力を高めるための手段は、5万円のシャワートイレを設置するだけのことかもしれません。それとも2,000万円の「資本的支出」、または2億円をかけて新築物件への建て替えかもしれません。再投資することによって、オーナーさまの収益が現状より上がるというビジョンが描けることが肝要です。投資額の大小はありますが、額が違うだけで、本質的には、「プロパティマネジメント」になります。
「マネジメント」という言葉は、単純に日本語訳すると「管理」と訳されるかもしれませんが、これは正確ではありません。この「マネジメント(management)」には「経営」という意味が含まれています。「経営コンサルタント」の英訳は「Management Consultant」と言いますが、これはただ「管理」するということではなく、「経営的に管理する」という意味があるのです。
「プロパティマネジメント」は「収益物件の経営代行」と言い換えることができるでしょう。預かった物件の「経営」を任されているのがプロパティマネジメントであり、よって利益を維持しさらに成長させていかなければなりません。家賃の下落や空室期間の長期化が発生したとき、オーナーさまの利益は減少します。その際、他業界と同じように「情報収集し、原因を探り、問題点を発見し、対策を練って実行する」といった対応をするのが経営代行というものです。対策案の提案をできること、つまり改善提案をすることが従来の「賃貸管理」と「プロパティマネジメント」の違いだと言えます。
経営代行型(プロパティマネジメント)会社および担当者(従業員)の役割は、オーナーさまの利益の最大化を目的として業務にあたることです。オーナーさまに代わって経営を行い、利益を最大限引き出すことを目指します。
オーナーさまの利益を最大化するため、「物件保有期間中の収入を最大化し、支出を最小化することで保有期間におけるキャッシュフローを最大化し、売却する場合にはできるだけ高く売れるように計画し実行する」ことが必要です。またオーナーさまの状況を常に把握しそれに応じて適切な提案をしていきます。オーナーさまの経営を請け負っているので、その収支状況や資産状況(BS、PL、キャッシュフロー)を把握することは必須であり、会社の経営を把握することと同じです。自分の経営状況を把握せずに、経営にあたることはできません。
具体的には、オーナーさまの確定申告や決算の内容を把握し、利益が多く見込めそうであれば、ポンプの取り替えなど近い将来必要になる修繕を提案します。こうした工事は一括で費用計上できるように実施し、節税を図ります。こうした対応は、担当者に税務的な知識があってこそできるものです。また、毎月の金融機関への返済額も把握し、たとえば修繕費などの支出がかさむ月はその支払いを来月に延ばすなど、返済額との兼ね合いで調節するようにします。
こういった細かな対応により、オーナーさまのキャッシュフローは安定させることができます。経営代行型管理会社の役割は、あくまでもオーナーさまの経営代行であることを常に前提として業務に取り組んでいきます。
経営代行にあたっては、オーナーさまの物件に応じた事業計画を確認しておき、その計画に沿った提案・運営を実施していきます。一般の企業でも、5年後に売上をいくらにしてこれだけの利益を上げるといったように必ず事業計画(経営計画)を立て、それに則って経営を行います。賃貸経営も全く同じで、今ある物件を持ち続けるつもりなのか、あるいは数年後に売却を検討しつつ保有するのかでは、管理方針は大きく違ってきます。
例えば、5年後に更地にして売却を考えている物件があるとします。外壁が古くなりそろそろ修繕が必要だという状況だとすると、5年後の売却が決まっていれば、できる限りコストをかけない塗装工事を提案することができます。半永久的に保有する予定の物件であれば、きちんとした塗装工事が望まれますが、5年後更地にすることを考えればコストを圧縮するのが適切な判断となります。
また、5年後に取り壊し更地にして売却することが決まっているのなら、その時期にあわせて入居者の退去についても考えておかなければなりません。その場合、普通借家契約で入居者との契約を結んでいると、退去してもらう際に多額の費用がかかります。そのため必ず定期借家契約で入居者との契約を結ぶようにしておきます。
このように、管理業務においては、将来を見据えた事業方針をオーナーさまと管理会社が常に共有し、それに沿った対応をしていくことが重要です。同じ物件で同じ問題が起こっても、物件の今後の事業方針によっては、その対応方法が大きく変わることがあるからです。このように、起こった現象に対し単純な判断をするのではなく、その時々で柔軟な対応をしていくことが「管理」というものであり、オーナーさまの事業方針に応じて、能動的に利益の最大化のため行動することが何より重要なのです。
今後の賃貸市場は、オーナーさまを代行する賃貸経営の専門家(プロ)同士の競争になることが予想されます。裁判が当事者を代弁する弁護士同士の戦いであるのと同じで、高い専門知識・ノウハウを持った賃貸経営代行管理会社同士が本格的な競争を繰り広げていくことになります。同じエリア内でマンション同士の入居者の奪い合いが激化する獲得競争でしょう。
そして管理会社と仲介会社の役割が明確となり、管理会社は経営に特化、仲介会社は客付けに特化するというように分化が進むことが予想されます。あるいはそうならなければ、これからの競争市場においてオーナーさまも管理会社も生き残っていくことは困難でしょう。
こうした競争は他の業界ではすでに当たり前のことであり、熾烈なお客さま獲得競争が日々繰り広げられています。これまでの賃貸市場では、住宅不足の時代が長く続き、競争とは無縁の時代が長く続いたために、賃貸経営の知識・ノウハウのない方でも賃貸マンション経営に携わることができました。しかしそれは今まで賃貸市場が例外であったからできたことであり、これからの状況はまったく変わってきています。
オーナーさまにとってこれからの選択肢は大きく分けて2つです。1つ目は、オーナーさま自身で専門知識とノウハウを積み重ね、プロとしての専門性を身につけた上で賃貸市場での競争に挑んでいくというもの。2つ目は、自分の利益を最大化してくれる賃貸経営の専門家(経営代行型管理会社)に経営を委託することです。今現在ではまだ賃貸管理業界の競争市場は成熟していません。今このタイミングで行動すれば、確実に賃貸業界で生き残っていくためのアドバンテージを得られるでしょう。